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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
四十九
岸本は家の中を眺め廻した。こうして義雄兄の子供と自分の子供とを一緒に置くことの結果を考えた。仮令兄には懐いても、嫂には懐かないという家庭の空気の中に子供等を置くことの結果をも考えた。いずれは竈を分けなければ成らない。兄の家族と別れ住むことを考えなければ成らない。その心支度をすることも彼に取っては礼奉公の一つであると考えた。
四十九
十一月を迎えるように成って節子は眼に見えて違って来た。三年も彼女の側に居て彼女のために心配しつづけた祖母さんまでがそれを言うほど違って来た。彼女の動作から彼女の声までも生々として来た。
「でも、ほんとに力を頂きましたねえ」
節子は岸本の二階に来てそう言って悦んで見せるほどに成った。
こうした力は――それを貰ったと言って見せる節子の方ばかりでなく、どうかして彼女を生かしたいと思う岸本の方にも強く働いて来た。ほんとうに人一人でも救いたいと考えれば考えるほど、彼は節子の違って来たのを自分の胸に浮べて、その生命の動きから湧いて来る歓喜を自分の身に切に感ずるように成った。のみならず、彼自身と姪との関係までも何となく変質したものと成って行くのを感じて来た。