轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
「姉さんの所へ来たのだ。姉さんの所へ来たのだ。」姉さん、勝彦はこの頃、瑠璃子をそう呼び慣っていた。
「姉さん! 姉さんの所へ!」
勝平は、そう云いながらも、自分自身地の中へ、入ってしまいたいような、浅ましさと恥しさとを感じた。が、それと同時に、韮を噛むような嫉妬が、ホンの僅かではあるが、心の裡に萌して来るのを、何うすることも出来なかった。が、父のそうした心持を、嘲るように、勝彦は又ニタリ/\と愚かな笑いを、笑いつゞけている。
「姉さんの所へ何をしに来たのだ。何の用があって来たのだ。こんなに夜遅く。」
勝平は、心の中の不愉快さを、じっと抑えながら、訊く所まで、訊き質さずにはいられなかった。
「何も用はない。たゞ顔を見たいのだ。」
勝彦は、平然とそれが普通な当然な事ででもあるように云った。
「顔を見たい!」
勝平は、そう口では云ったものの、眼が眩むように思った。他人は、誰も居合わさない場所ではあったが、自分の顔を、両手で掩い隠したいとさえ思った。
彼は、もう此の上、勝彦に言葉を掛ける勇気もなかった。が、今にして、息子のこうした心を、刈り取って置かないと、どんな恐ろしい事が起るかも知れないと思った。