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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
五
また、そう云うものが存在している世の中に、住みながら、教育家とか思想家などと云う人達が、晏然として手を拱いているのですもの。女性ばかりに、貞淑であれ! 節操を守れ! 男性を弄ぶな! そんなことを、幾何口を酸くして説いても、妾はそれを男性の得手勝手だと思いますの。男性の我儘だと思います。丁度此の青木さんのノートが、男性の我儘を示しているように。」
虐げられたる女性全体の、反抗の化身であるように、夫人の態度は、跳ね返る竹の如き鋭さを持っていた。
五
夫人は、心の中に抑えに抑えていた女性としての平生の鬱憤を、一時に晴してしまうように、烈しく迸る火花のように喋べり続けた。
「人が虎を殺すと狩猟と云い、紳士的な高尚な娯楽としながら、虎が偶々人を殺すと、兇暴とか残酷とかあらゆる悪名を負わせるのは、人間の得手勝手です。我儘です。丁度それと同じように、男性が女性を弄ぶことを、当然な普通なことにしながら、社会的にも妾だとか、芸妓だとか、女優だとか娼婦だとか、弄ぶための特殊な女性を作りながら、反対に偶々一人か二人かの女性が男性を弄ぶと妖婦だとか毒婦だとか、あらゆる悪名を負わせようとする。