轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
勝平が、今迄金で買い得た女性の美しさは、此少女の前では、皆偽物だった。金で買い得るものと思っていたものは、皆贋物だったのだ。勝平は此少女の美しさからも、今迄の誇を可なり傷けられてしまった。
それ丈ではなかった。此二人が、恋人同士であることが、勝平にもすぐそれと判った。二人の交している言葉は、低くて聞えなかったが、時々お互に投げ合っている微笑には、愛情が籠もっていた。愛情に燃えていながら、而も浄く美しい微笑だった。
二人の睦じい容子を見ている裡に、勝平の心の中の憤怒は何時の間にか、嫉妬をさえ交えていた。『凡ての事は金だ。金さえあればどんな事でも出来る。』と思っていた彼の誇は、根柢から揺り動かされていた。此の二人の恋人が、今感じ合っているような幸福は、勝平の全財産を、投じても得られるか、何うか分らなかった。少女の顔に浮ぶ、浄いしかも愛に溢れた微笑の一つでさえ、購うことが出来るだろうか。いかにも、新橋や赤坂には、彼に対して、千の媚を呈し、万の微笑を贈る女は、幾何でもいる。が、その媚や微笑の底には、袖乞いのような卑しさや、狼のような貪慾さが隠されていた。