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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
この岸本の言葉は二人の学友には串談とも聞えたか知れないが、彼自身は自分で自分の言ったことを笑えなかった。煙のような風塵が復た恐ろしくやって、彼は口の中がジャリジャリするほど砂を浴びた。
その日は葬式の帰りがけにも関らず菅と二人で足立の家へ押掛けた。
「こうして揃って来て貰うことは、めったに無い」それを足立が言っていろいろと持成してくれた。思わず岸本は話し込んで、車夫を門前に待たせて置きながら、日暮頃までも話した。
「皆一緒に学校を出た時分――あの頃は、何か面白そうなことが先の方に吾儕を待っているような気がした。こうしているのが、これが君、人生かねえ」
言出すつもりもなく岸本はそれを二人の学友の前に言出した。
「そうサ、これが人生だ」と菅は冷静な調子で言った。「僕はそう思うと変な気のすることがある」
「もうすこしどうかいうことは無いものかね」
と岸本が言うと、足立はそれを引取って、
「そんなに面白いことが有ると思うのが、間違いだよ」
足立の部屋に菅と集まって見て、岸本はそこにも不思議な沈黙が旧い馴染の三人を支配していることを感じたのであった。それほど隔ての無い仲間同志にあっても、それほど喋舌ったり笑ったりしても、互いに心が黙っていた。