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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

階段の昇降に、岸本はそこいらに遊び戯れている仏蘭西の子供等の側へよく行った。皆が幾歳になるかということをよく尋ねた。黒い上衣に短い半ズボンを穿いて脛をあらわした仏蘭西風の子供の風俗は、国の方で見るものとは似てもつかないようなものばかりだ。でも岸本は側へ来る子供の青い眸なぞに見入って、国の方に自分を待つ泉太や繁の成長を想像した。これから彼が帰って行って見る泉太はもう十二歳、繁の方は十歳にも成る。

国を出る時子供を頼んで置いて来た節子のことも、泉太や繁の成長を想像すると同時に、岸本の胸に浮んで来た。下宿の主婦の姪という人は、可哀そうにあの人の婚約して置いた末頼もしい仏蘭西人も戦地の方へ行って死んだとやらで、今ではリモオジュの田舎の方に帰っているが、あの主婦の姪が丁度節子と同年だ。彼女は気味の悪いほど赤く縮れた髪をもった、巌畳な体格の女で、リモオジュから主婦の手伝いに巴里へ出て来たばかりの頃はいかにも田舎臭い娘であったが、その人がもう一度田舎の方へ帰って行く頃には見違えるほど巴里の風俗を学んで、働き好きな娘らしい手なぞにもさすがに若い女のさかりを思わせるものがあった。