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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
背は主婦よりも高かった。この人を通して岸本はよく自分の姪の成長を想像した。若い娘のようにばかり思っていた節子がもう二十四だ。
節子からの便りは岸本が下宿を引揚げる前に届いた。彼女はつつましやかな調子で、叔父さんのために帰国の旅の無事を祈るということや、留守宅の子供も極く丈夫で叔父さんの帰りを待侘びているということや、しかし叔父さんが遠からず国に帰ってこの留守宅の様子を見たらどう思うであろうか、それが気遣われるということなぞを書いてよこした。
「力強い御留守居も出来ないで、ほんとに御免なさいね」
こんな言葉もその中に書いてあった。
最早一頃のように恐ろしく神経の尖った、可傷しい調子は彼女の手紙の中に無かった。殊にその最近の便りは、旅に来て岸本が彼女から受取ったかずかずの手紙の中でも一番心易く読めるような、わだかまりの無い調子で書いてあった。
「節ちゃんもこういう調子でいてくれると難有い」
思わず岸本はそれを言って見た。同時に、その年齢までまだ身もかため得ずにぶらぶらしているらしい彼女の事が、何となく無言な力をもって岸本の胸に迫って来た。
三
国の方で持上る節子の縁談に就いては、岸本は全くそれを知らないでも無かった。