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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
人間はそう易々とは、死なないよ。いや待っていたまえ。今に、泣きを入れに来るよ。なに、先方が泣きを入れさえすれば、そうは苛めないよ。もと/\、一寸した意地からやっていることだからね。」
「それでも、もしお嬢さんをよこすと云ったら御結婚になりますかね。」
「いや、それだがね。俺も考えたのだよ。いくら何だと言っても、二十五六も違うのだろう。世間が五月蠅からね。只でさえ『成金! 成金!』と、いやな眼で見られているんだろう。それだのに、そんな不釣合な結婚でもすると、非難攻撃が、大変だからね。それで、俺が花婿になることは思い止まったよ。倅の嫁にするのだ。倅の嫁にね。あれとなら、年丈は似合っているからね。その事は先方へも云って置いたよ。」
「御子息の嫁に!」
そう云ったまゝ、木下は二の句が継げなかった。荘田の息、勝彦と云うその息は、二十を二つ三つも越していながら、子供のようにたわいもない白痴だった。白痴に近い男だった。そうだ! 年丈は似合っている。が、瑠璃子の夫としては、何と云う不倫な、不似合な配偶だろう。金のために旧知を売った木下にさえ、荘田の思い上った暴虐が、不快に面憎く感ぜられた。