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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
或新聞紙は貴族院第一の硬骨を以て、称せらるゝ唐沢男爵に、そうした卑しい事のあるべき筈はないと、打消した。他の新聞紙は宛も事件の真相を伝える如くに云った、曰く『荘田勝平は唐沢男に私淑しているのだ。彼は数十万円を投じて唐沢家の財政上の窮状を救ったのだ。唐沢男が、娘を与えたのは、その恩義に感じたからである。』と。他の新聞紙は、またこんな記事を載せた。結婚の動機は、唐沢瑠璃子の強い虚栄からである。彼女は学習院の女子部にいた頃から、同窓の人々の眉を顰めさせるほど、虚栄心に富んだ女であった、と。そうした記事に伴って女子教育家や社会批評家の意見が紙面を賑わした。或者は、成金の金に委せての横暴が、世の良風美俗を破ると云って憤慨した。或者は、米国の富豪の娘達が、欧洲の貴族と結婚して、富と爵位との交換を計るように、日本でも貧乏な華族と富豪が頻々として縁組を始めたことを指摘して、面白からぬ傾向である、華族の堕落であると結論した。
が、そうした轟々たる世論を外に、荘田は結婚の準備をした。春の園遊会に、十万円を投じて惜しまなかった彼は、晴の結婚式場には、黄金の花を敷くばかりの意気込であった。