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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

」

そう云いながらも、瑠璃子はその美しい冷たい笑いを絶たなかった。勝平は、その巨きい身体をのたうつようにして云った。

「貴女は、俺を飽くまでも、馬鹿にしておられるのじゃ。貴女は人間としての俺を信用しておられんのじゃ。貴女は、俺の人格を信じておられないのじゃ。俺に人間らしい心のあることを信じておられないのじゃ。よし、貴女が俺を人間として扱って下さらないなら、俺は獣として、貴女に向って行くのじゃ。俺は獣のように、貴女に迫って行くのじゃ。」

勝平の眸は燃ゆるように輝やいた。

「そうだ! 俺は獣として貴女に迫って行く外はない!」

そう云ったかと思うと、勝平は羆が人間を襲う時のように、のッと立ち上った。

瑠璃子も弾かれたように、立ち上った。

立ち上った勝平は、フラ/\と蹌めいてやっと踏み堪えた。彼はその凄じい眸を、真中に据えながら、瑠璃子の方へジリ/\と迫って来た。

かよわい瑠璃子の顔は、真蒼だった。身体はかすかに顫えていたけれども、怯びれた所は少しもなかった。その美しい眉宇は、きっと、緊きしまって、許すまじき色が、アリ/\と動いた。

丁度、その時だった。風に煽られた大雨が一頻り沛然として降り注いで来た。