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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
母が日曜の午後を、華麗な客間で、多くの男性に囲まれて、女王のように振舞っているのを外に、美奈子は自分の離れの居間に、日本室の居間に、気に入りの女中を相手に、お琴や挿花のお復習に静かな半日を送るのが常だった。
時々は、客間に於ける男性の華やかな笑い声が、遠く彼女の居間にまで、響いて来ることがあったが、彼女の心は、そのために微動だにもしなかった。そうした折など、女中達が、瑠璃子夫人の奔放な、放恣な生活を非難するように、
「まあ! 大変お賑かでございますわね。奥様もお若くていらっしゃいますから。」
などと、美奈子の心を察するように、忠勤ぶった蔭口を利く時などには、美奈子は、その女中をそれとなく窘めるのが常だった。
が、日曜の午後を、彼女はもっと有意義に過すこともあった。それは、青山に在る父と母とのお墓にお参りすることであった。
彼女は、女中を一人連れて、晴れた日曜の午後などを、わざと自動車などに乗らないで、青山に父母の墓を訪ねた。
彼女は夢のような幼い時の思出などに耽りながら、一時間にも近い間、父母の墓石の辺に低徊していることがあった。
六月の終りの日曜の午後だった。