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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
その裡に、彼女の心にも、少女らしい計画が考えられていた。そうだ! 此の次の日曜にも、お墓詣りをして見よう。もし、あの新しい墓の主が、兄妹に取って親しい父か母かであったならば、此次の日曜にも二人は屹度、お詣りをしているのに違ない。
そう考えて来ると、美奈子には次の日曜が廻って来るのが、一日千秋のように、もどかしく待たれた。
が、待たれたその日曜が来て見ると、昨夜からの梅雨らしい雨が、じめ/\と降っているのだった。
「今日はお墓詣りに行こうと思っていたのですけれども。」
美奈子は、朝母と顔を見合すと、運動会の日を雨に降られた少女か何かのように、滾すように言った。瑠璃子には美奈子の失望が分らなかった。
「だって! 美奈さんは、前の日曜にもお参りしたのじゃないの。」
「でも、今日も何だか行きたかったの。妾楽しみにしていたのです。」
「そう! じゃ、自動車で行って来てはどう。自動車を降りてから、三十間も歩けばいゝのですもの。」
瑠璃子は、優しく言った。
「でも!」そう言って、美奈子は口籠った。
雨を衝いてでも、風を衝いてでも、自分は行ってもいゝ。が、先方は? そう思うと、美奈子は寂しかった。