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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

大学生達は皆死んだ青年の学友であるらしかった。彼女は何か二言三言言葉を換すと乗るべき自動車に片手をかけて、華やかな微笑を四人の中の、誰に投げるともなく投げて、その娜やかな身を飜して忽ち車上の人となったが、つと上半身を出したかと思うと、

「本当にそう考えて下さっては、妾困りますのよ。」と、嫣然と云い捨てると、扉をハタと閉じたが自動車はそれを合図に散りかゝる群衆の間を縫うて、徐ろに動き始めた。

大学生達は、自動車の後を、暫らく立ち止まって見送ると、その儘肩を揃えて歩き出した。信一郎も学生達の後を追った。学生達に話しかけて、此女性の本体を知ることが時計の持主を知る、唯一の機会であるように思ったからである。

学生達は、電車に乗る積だろう。式場の前の道を、青山三丁目の方へと歩き出したのであった。信一郎は、それと悟られぬよう一間ばかり、間隔を以て歩いていた。が、学生達の声は、可なり高かった。彼等の会話が、切れ切れに信一郎にも聞えて来た。

「青木の変死は、偶然だと云えばそれまでだが、僕は死んだと聞いたとき、直ぐ自殺じゃないかと思ったよ。」と、一番肥っている男が云った。