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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
「それじゃ、青木君とあの瑠璃子夫人とは、そう大したお交際でもなかったのですね。」
「いやそんな事もありませんよ。此半年ばかりは、可なり親しくしていたようです。尤もあの奥さんは、大変お交際の広い方で、僕なぞも、青木君同様可なり親しく、交際している方です。」
大学生は、美貌の貴婦人を、知己の中に数え得ることが、可なり得意らしく、誇らしげにそう答えた。
「じゃ、可なり自由な御家庭ですね。」
「自由ですとも、夫の勝平氏を失ってからは、思うまゝに、自由に振舞っておられるのです。」
「あ! じゃ、あの方は未亡人ですか。」信一郎は、可なり意外に思いながら訊いた。
「そうです。結婚してから半年か其処らで、夫に死に別れたのです。それに続いて、先妻のお子さんの長男が気が狂ったのです。今では、荘田家はあの奥さんと、美奈子と云う十九の娘さんだけです。それで、奥さんは離縁にもならず、娘さんの親権者として荘田家を切り廻しているのです。」
「なるほど。それじゃ、後妻に来られたわけですね。あの美しさで、あの若さで。」と、信一郎は事毎に意外に感じながらそう呟いた。
大学生は、それに対して、何か説明しようとした。