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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
青年の顔は、真蒼になっていた。眼ばかりが、爛々と暗の中に光っていた。
「ねえ! 青木さん。それでは、よく心を落ち着けて聴いて下さいませ! 妾、あの、大変お気の毒ではございますけれども、よく/\考えて見ましたところ、貴君のお申出に応ずることが出来ないのでございます。」
瑠璃子の言葉に、闘牛が、止めの一撃を受けたように、青年の細長い身体が、タジ/\と後へよろめいた。
彼は、両手で頭を抱えた。身体を左右に悶えた。呟きとも呻きとも付かないものが口から洩れた。
美奈子は、見ているのに堪えなかった。もし、母が傍にいなかったら、走り寄って、青年の身体を抱えて、思うさま慰めてやりたかった。
二分ばかり、青年の苦悶が続いた。が、彼はやっと、その苦悶から這い上って来た。
母から受けた恥辱のために、彼の眼は血走り、彼の眥は裂けていた。
「あなたのは、お断りになるのではなくて、僕を恥しめるのです。僕がそっとお願いしたことを、美奈子さんの前で、貴女にはお子さんかも知れないが、僕には他人です、その方の前で、恥しめるのです。拒絶ではなくして、侮辱です。僕は生れてから、こんな辱しめを受けたことはありません。