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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
殊に、あの四阿の建て方なんか厭ですね。」
年の若い二人は、此日の園遊会の主催者なる勝平が、たゞ一人こんな淋しい処にいようなどとは夢にも考え及ばないらしく、勝平の方などは、見向きもしないで話し続けた。
「お金さえかければいゝと思っているのでしょうか。」
美しい令嬢は、その美しさに似合わないような皮肉な、口の利き方をした。
「どうせ、そうでしょう。成金と云ったような連中は、金額と云う事より外には、何にも趣味がないのでしょう。凡ての事を金の物差で計ろうとする。金さえかければ、何でもいゝものだと考える。今日の園遊会なんか、一人宛五十円とか百円とかを、入れるとか何とか云っているそうですが、あの俗悪な趣向を御覧なさい。」
青年は、何かに激しているように、吐き出すように云った。
先刻から、聞くともなしに、聞いていた勝平は、烈しい怒で胸の中が、煮えくり返るように思った。彼は、立ち上りざま、悪口を云っている青年の細首を捕えて、邸の外へ放り出してやりたいとさえ思った。彼は若い時、東京に出たときに労働をやった時の名残りに、残っている二の腕の力瘤を思わず撫でた。が、遉に彼の位置が、つい三四分前まで、あんなに誇らしく思っていた彼の社会的位置が彼のそうした怒を制して呉れた。