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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
六
」
瑠璃子の今宵に限って、温かい態度に、勝平は心から悦に入っているのだった。
「それも、無理はありません。貴女が内心俺を嫌っているのも、全く無理はありません。当然です、当然です。俺も嫌がる貴女を、何時までも名ばかりの妻として、束縛していたくはないのです。これが、どんな恐ろしい罪かと云うことが分っているのです。所がですね。初めはホンの意地から、結婚した貴女が、一旦形式丈でも同棲して見ると、……一旦貴女を傍に置いて見ると、死んでも貴女を離したくないのです。いや、死んでも貴女から離れたくないのです。」
余程酒が進んで来たと見え、勝平は管を捲くようにそう云った。
六
風は益々吹き荒れ雨は益々降り募っていた。が、勝平は戸外のそうした物音に、少しも気を取られないで、瑠璃子が酌いでやった酒を、チビリ/\と嘗めながら、熱心に言葉を継いだ。
「まあ、簡単に云って見ると、スッカリ心から貴女に惚れてしまったのです! 俺は今年四十五ですが、此年まで、本当に女と云うものに心を動かしたことはなかったのです。勝彦や美奈子の母などとも、たゞ、在来の結婚で、給金の入らない高等な女中をでも、傭ったように考うて、接していたのです。