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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
百三十九
「明日は私も谷中へ行くつもりですが――後へ節ちゃんの心が残るといけないから、誰も停車場までは来てくれるなッて、台湾の伯父さんもそう仰いますからね、私もまあ一ちゃんでも連れて、上野あたりまで見送ってあげるつもりです」
「ああそうか。俺も今度は万事遠慮することにした」と岸本は答えた。
「昨日は私の家でも台湾へ行く人だけを呼びました。台湾の伯父と節ちゃんの二人にお客さまに成って頂きましてね。何か私も節ちゃんにお餞別をと思いまして、何でもお望みって言いましたら、節ちゃんが書籍を欲しいなんて言いましてね、二人で神田まで探しに行きましたよ。そう言えば、節ちゃんの頂いた書籍で、叔父さんのところにお預けしたのが有るそうですね。あれを私に頂いて来てくれッて、節ちゃんから言伝かってまいりましたよ。もし有りましたら」
「お前も明日谷中へ行くなら、そう言っておくれ。節ちゃんも無論承知のことだろうとは思うがね、これから台湾へ行ってゆっくり書籍でも読める時があると思うと大違いだッて、俺がそう言っていたッて。どうせ義雄さんの方から節ちゃんの食い扶持が行く訳ではなかろうし、台湾の伯母さんから見れば厄介者が一人舞込むようなものだからねえ。