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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
いざと云う時が来たら、一太刀に切って捨てようとする気勢が、あり/\と感ぜられた。が、勝平は相手の容子などには、一切頓着しないように、臆面もなく話し続けた。
「いつか、日本倶楽部で、初めて閣下の崇高なお姿に接して以来、益々閣下に対する私の敬慕の念が高くなったのです。多年の間、利慾権勢に目もくれず、たゞ国家のために、一意奮闘していらっしゃる。こう云うお方こそ、本当の国士本当の政治家だと思ったのです。」
父が、面と向ってのお世辞に、苦り切っている有様が、室外にいる瑠璃子にもマザ/\と感ぜられた。
「御存じの通り、私は外に能のある人間でありません。たゞ、二三年来の幸運で、金丈は相当儲けました。私は、今何に使っても心残りのない金を、五百万円ばかり現金で持っています。あゝ使え、こう寄附しろと云って呉れる人もありますが、私は閣下のようなお方に、後顧の憂いなからしめ、国家のために思い切り奮闘していたゞけるようにする事も、可なり意義のある立派な仕事だと思ったのです。それには、是非ともお交際を願って、いろ/\な立ち入った御相談にも、与らせて戴きたいと、それで実はあんな突然なお申込を……」