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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
六
金で以て、こんな白痴の妻――否弄び物に、自分をしようとしたのだと思うと、勝平に対する憎悪が又新しく心の中に蒸し返された。
六
勝彦と美奈子とが、彼等自身の部屋へ去った頃には、夜は十一時に近く、新郎新婦が新婚の床に入るべき時刻は、刻々に迫っていた。
勝平は、先刻から全力を尽くして、瑠璃子の歓心を買おうとしていた。彼は、急に思い出したように、
「おゝそう/\、貴女に、結婚進物として、差し上げるものがありましたっけ。」
そう云いながら、彼は自分の背後に据え付けてある小形の金庫から、一束の証書を取り出した。
「貴女のお父様に対する債権の証文は、みんな蒐めた筈です。さあ、これを今貴女に進上しますよ。」
彼は、その十五万円に近い証書の金額に、何の執着もないように、無造作に、瑠璃子の前に押しやった。
瑠璃子は、その一束を、チラリと見たが、遉にその白い頬に、興奮の色が動いた。彼女は、二三分の間、それを見るともなく見詰めていた。
「あのマッチは、ございますまいか。」彼女は、突如そう訊いた。
「マッチ?」勝平は、瑠璃子の突然な言葉を解し得なかった。
「あのマッチでございますの。