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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
奥さんは!」勝平は、オド/\している十五六の小間使を、噛み付けるように叱り飛した。
「お庭でございます。」
「庭から、早く帰って来るように云って来るのだ。俺が起きているじゃないか。」
「ハイ。」小さい小間使は、勝平の凄じい様子に、縮み上りながら、瑠璃子を呼びに出て行った。
瑠璃子が、入って来れば、此の押え切れない憤を、彼女に対しても、洩そう。白痴の子を弄んでいるような、彼女の不謹慎を思い切り責めてやろう。勝平はそう決心しながら、瑠璃子が入って来るのを待っていた。
二三分も経たない裡に、衣ずれの音が、廊下にしたかと思うと、瑠璃子は少女のようにいそいそと快活に、馳け込んで来た。
「まあ! お早う! もう起きていらしったの。妾ちっとも、知らなかったのよ。お寝坊の貴方の事だから、どうせ十一時近くまでは大丈夫だと思っていたのよ。昨夜あんなに遅く帰って来たのに、よくまあ早くお目覚になったこと。この花美しいでしょう。一番大きくて、一番色の烈しい花なのよ。妾これが大好き。」
そう云いながら、瑠璃子は右の手に折り持っていた、真紅の大輪のダリヤを、食卓の上の一輪挿に投げ入れた。