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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

何うです、瑠璃子さん! 俺の心が少しはお分りになりますか。」

勝平は、そう云って言葉を切った。酔ってはいたが、その顔には、一本気な真面目さが、アリ/\と動いていた。こうした心の告白をするために、故意と酒盃を重ねているようにさえ、瑠璃子に思われた。

「俺は、世の中に金より貴いものはないと思っていました。俺は金さえあれば、どんな事でも出来ると思っていました。実際貴女を妻にすることが、出来た時でさえ、金があればこそ、貴女のような美しい名門の子女を、自分の思い通にすることが出来るのだと思っていたのです。が、俺が貴女を、金で買うことが出来たと想ったのは、俺の考違でした。金で俺の買い得たのは、たゞ妻と云う名前丈です。貴女の身体をさえ、まだ自分の物に、することが出来ないで苦しんでいるのです。まして、貴女の愛情の断片でも、俺の自由にはなっていないのです。俺は貴女の俺に対する態度を見て、つく/″\悟ったのです。俺の全財産を投げ出しても、貴女の心の断片をも、買うことが出来ないと云うことを、つく/″\悟ったのです。が、そう思いながらも、俺は貴女を思い切ることが出来ないのです。