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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
それは男性の得手勝手です。我儘です。妾は、そうした男性の我儘に、一身を賭して反抗してやろうと思っていますの。」
彼女は、一寸言葉を途切らせてから、
「青木さんとの事だって、そうでございますわ。貴君などは、凡ての責任を妾に負わせようと遊ばす。妾が、清浄無垢な青木さんを迷わしたようなことをお云いになる。が、あの時計だって、妾が青木さんに、どうかお受け取りになって下さいと云って、差し出したものじゃあございませんわ。青木さんが、幾度も呉れ/\と仰しゃったから差し上げたのよ。自分がおねだりなすったことなどは、ちっとも書いておありにならないのですもの。だから、自惚れが強くって我儘だと申したのですわ。またあの方が、幾何自殺をすると書いておありになっても、それはあの方の詠嘆に過ぎませんわ。もし、自動車が転覆しなかったら、あの方は今日あたりは、妾の客間へお見えになったかも知れませんよ。また縦令自殺の決心が、本当でおありになったとしても、それを妾一人の責任のように、御解釈なさることは、御免蒙りたいと思いますわ。だって、あの方の性格の弱さに対してまで、妾は責任を持ちたくありませんもの。