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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
その美しい眼を心持泣き脹して、雪のような喪服を纏うて、俯きがちに、しおたれて歩む姉妹の姿は、悲しくも亦美しかった。
それに、続いてどの馬車からも、一門の夫人達であろう、白無垢を着た貴婦人が、一人二人宛降り立った。信一郎は、その裡の誰かゞ、屹度瑠璃子に違いないと思いながら、一人から他へと、慌しい眼を移した。が、たゞいら/\する丈で、ハッキリと確める術は、少しもなかった。
霊柩が式場の正面に安置せられると、会葬者も銘々に、式場へ雪崩れ入った。手狭な式場は見る見る、一杯になった。
式が始まる前の静けさが、其処に在った。会葬者達は、銘々慎しみの心を、表に現わして紫や緋の衣を着た老僧達の、居並ぶ祭壇を一斉に注視しているのであった。
式場が静粛に緊張して、今にも読経の第一声が、この静けさを破ろうとする時だった。突如として式場の空気などを、少しも顧慮しないようなけたゝましい、自動車の響が場外に近づいた。祭壇に近い人々は、遉に振向きもしなかった。が、会葬者の殆ど過半が、此無遠慮な闖入者に対して叱責に近い注視を投げたのである。
自動車は、式場の入口に横附けにされた。