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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
四
「まあ! うるさいたらありはしないわ。こんな小旅行の出発を、わざ/\見送って呉れたりなどして。」
夫人は美奈子に対する言い訳のように呟きながら席に着いた。
母を囲む男性達が、青木の同行を気にかけている以上に、もっと気にかけていたのは美奈子だった。その人と一緒に汽車に乗ったり、一緒に宿屋に宿ったり、同じ食卓に着いたりすることを考えると、彼女の小さい心は、戦いていたと云ってもよかった。それは恐ろしいことであり、同時に、限りなき歓喜でもあったのだ。が、その人は到頭姿を現わさない。母も前言を打ち消すような事を言っている。美奈子の心配はなくなった。それと同時に、彼女の歓喜も消えた。たゞ白々しい寂しさ丈が、彼女の胸に残っていた。
美奈子の心持を少しも知らない瑠璃子は、美奈子が沈んだ顔をしているのを慰めるように言った。
「美奈さんなんか、何うお考えになって。妾達女性を追うているあゝ云う男性を。あゝ云う女性追求者と云ったような人達を。」
美奈子は黙って答をしなかった。母が交際っている人達を、厭だとも言えなかった。それかと言って、決して好きではなかった。
「あんな人達と結婚しようなどとは、夢にも考えないでしょうね。