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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
ある三角関係
一
背丈こそ高く、容子こそ大人びているが、名門に育った此の青年が対人的にはホンの子供であることが、瑠璃子にも、マザ/\と分った。
ある三角関係
一
その裡に、美奈子達の一行は改札口を出ていた。駅前の広場には、赤帽が命じたらしい自動車が二台、美奈子達の一行を待っていた。
青年は、瑠璃子夫人の力に、グイ/\引きずられながらも、自動車に乗ることは、可なり気が進んでいないらしかった。
彼は哀願するように、オズ/\と夫人に云った。
「何うです? 奥さん。僕お願いなのですが、電車で行って下さることは出来ないでしょうか。兄の惨死の記憶が、僕にはまだマザ/\と残っているのです。兄を襲った運命が、肉親の僕に、何だか糸を引いているように、不吉な胸騒ぎがするのです。何だか、兄と同じ惨禍に僕が知らず識らず近づいているような、不安な心持がするのです。」
青年は、可なり一生懸命らしかった。が、瑠璃子は青年の哀願に耳を傾けるような容子も見せなかった。彼女は、意志の弱い男性を、グン/\自分の思い通に、引き廻すことが、彼女の快楽の一つであるかのように云った。
「まあ! 貴君のように、そうセンチメンタルになると、いやになってしまいますよ。