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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
それは、日本の近代文明が、初て生み出したような美しさと表情を持っていた。明治時代の美人のように、個性のない、人形のような美しさではなかった。その眸は、飽くまでも、理智に輝いていた。顔全体には、爛熟した文明の婦人に特有な、智的な輝きがあった。
婦人席で多くの婦人の中に立っていながら、此の女性の背後丈には、ほの/″\と明るい後光が、射しているように思われた。
年頃から云えば娘とも思われた。が、何処かに備わっている冒しがたい威厳は、名門の夫人であることを示しているように思われた。
信一郎が、此の女性の美貌に対する耽美に溺れている裡に、葬式のプログラムはだん/\進んで行った。死者の兄弟を先に一門の焼香が終りかけると、此の女性もしとやかに席を離れて死者の為に一抹の香を焚いた。
やがて式は了った。会葬者に対する挨拶があると、会葬者達は、我先にと帰途を急いだ。式場の前には俥と自動車とが暫くは右往左往に、入り擾れた。
信一郎は、急いで退場する群衆に、わざと取残された。彼は群衆に押されながら、意識して、彼の女性に近づいた。
女性が、式場を出外ずれると、彼女はそこで、四人の大学生に取り捲かれた。