轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

瑠璃子はふと、父が若い時に何かに激昂すると、直ぐ日本刀を抜いて、ビュウビュウと、部屋の中で振り廻すのが癖だったと、亡き母から聞いたことを思い出した。

あんなに、父が昂奮しているとすると、若し明日荘田の代理人が、父に侮辱に近い言葉でも吐くと短慮な父は、どんな椿事を惹き起さないとも限らないと思うと、瑠璃子は心配の上に、又新しい心配が、重なって来るようで、こんな時家出した兄でも、いて呉れゝばと、取止めもない愚痴さえ、心の裡に浮んだ。

その日、五時を廻った時だった。父は、瑠璃子を呼んで、外出をするから、車を呼べと云った。もう、金策の当などが残っている筈はないと思うと、彼女は父が突然出かけて行くことが、可なり不安に思われた。

「何処へ行らっしゃるのでございますか。もう直ぐ御飯でございますのに。」瑠璃子は、それとなく引き止めるように云った。

「いや、木下から預った軸物が急に心配になってね。これから行って、届けてやろうと思うのだ。向うでは、あゝした高価なものだとは思わずに、預けたのだろうから。」父の答えは、何だか曖昧だった。

「それなら、直ぐ手紙でもお出しになって、取りに参るように申したら、如何でございましょう。