轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

火のように熱した身体中の血が今は却って、氷のように冷たくなっていた。

「俺が死ねば、彼奴の迫害の手も緩むだろうし、それに依って、汚名を流さずして済む。つまり、俺は悪魔の手に買い取られた俺の社会的名誉を、血を以て買い戻そうと思ったのだ。お前のことを、思わないではない。父の外には頼る者もないお前のことを思わないではない。が、破廉恥の罪人になることを考えると、泥棒と同じ汚名を被ることを考えると、何も考えておられなくなったのだ。」

父は、そう云いながら、心の裡の苦しさに堪えられないように、頻りに身を悶えた。

「が、扉の外でお前が突然叫び出した声を聞くと、刀を持っていた俺の手が、しびれてしまったように、何うしても俺の思い通に、動かないのだ。未練だ! 未練だ! と、心で叱っても、手が何うしても云うことを聴かないのだ。俺は、今初めてお前に対する父としての愛が、名誉心や政治上の野心などよりも、もっと大きいことが分ったのだ。俺は、社会上の位置を失っても、お前の為に生き延びようと思ったのだ。破廉恥罪の名を被ても、お前の父として、生き延びようと思ったのだ。名誉や位置などは、なくなっても、お前さえあれば、まだ生き甲斐があると云うことが、分ったのだ。