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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
」
そうした問答が、聞えたかと思うと、扉が音もなく開いて、十六――恐らく七にはなるまい少女が姿を現した。色の浅黒い、眸のいきいきとした可愛い少女だった。彼女は、兄の恥を自分の身に背負ったように、顔を真赤にしていた。
「お父様! お客様でございます。」
客に、丁寧に会釈をしてから、父に向って名刺を差し出しながら、しとやかそうに云った。傲岸な父の娘として、白痴の兄の妹として、彼女は狼に伍した羊のように、美しく、しとやかだった。
「木下さん。これが娘です。」
そう云った荘田の顔には、娘自慢の得意な微笑が、アリ/\と見えた。が、彼の眼が、開かれた扉の所に立って、キョトンと室内を覗いている長男の方へ転ずると、急にまた悄気てしまった。
「あゝ美奈さん。兄さんを早う向うへ連れて行ってね。それから、杉野さんをお通しするように。」
娘に、優しく云い付けると、客の方へ向きながら、
「御覧の通りの馬鹿ですからね。唐沢のお嬢さんのような立派な聡明な方に、来ていたゞいて、引き廻していたゞくのですね。はゝゝゝゝ。」
馬鹿な長男が去ると、荘田は又以前のような得意な傲岸な態度に還って行った。