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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
それは、丁度よかったのね。それでお父様の御容体は。」
そういい捨てると、彼女は又じっと聞き入った。
「そう!……それで……入沢さんが、入らしったの!……それで、なるほど……」
彼女は、短い言葉で受け答をしながらも、その白い面は、だん/\深い憂慮に包まれて行った。
「えぃ! 重体! 今夜中が……もっと、ハッキリと言って下さい! 聞えないから。なに、なに、お父様は帰って来てはいけないって! でもお医者は何と仰しゃるの? えぃ! 呼んだ方がいゝって! 妾! 何うしようかしら。あゝあゝ。」
彼女は、もうスッカリ取り擾してしまったように、身を悶えた。
「何うしたのだ。何うしたのだ。」
勝平は、遉に色を変えながら、瑠璃子の傍に、近づいた。
「あのう、お父様が、宅の玄関で二度目の卒倒を致しましてから、容体が急変してしまったようでございますの。妾こうしてはおられませんわ。ねえ! 一寸帰って来ましてもようございましょう。お願いでございますわ。ねえ貴方!」
瑠璃子は、涙に濡れた頬に、淋しい哀願の微笑を湛えた。
「あゝいゝとも、いゝとも。お父様の大事には代えられない。直ぐ自動車で行って、しっかり介抱して上げるのだ。