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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

勝平は、咄嗟にそう考えた。

「あはゝゝゝゝ。」彼は突然取って付けたように笑い出した。「まあいゝ! 貴女がそんなに馬鹿が好きなら連れて行くもよかろう。貴女のようなのは、天邪鬼と云うのだ。あはゝゝゝゝ。」

勝平は、嫉妬と憤怒とを心の底へと、押し込みながら、何気ないように笑った。

「何うも、有難う。やっと、お許しが出ましたのね。」瑠璃子も、サラリと何事もなかったように微笑した。

その時に、勝平は急に思い付いたように云った。

「そう/\。貴女に話すのを忘れていた。此間中頭が重いので、一昨日、近藤に診て貰うと、神経衰弱の気味らしいと云うのだ。海岸へでも行って、少し静養したら何うだと云うのだがね、そう云われると、俺も此の七月以来会社の創立や何かで、毎日のように飛び廻っていたものだからね、精力主義の俺も可なりグダ/\になっているのだ。神経衰弱だなんて、大したこともあるまいと思うが、まあ暫らく葉山へでも行って、一月ばかり遊んで来ようかと思うのだ。尤も、彼処からじゃ、毎日東京に通っても訳はないからね。それに就いては、是非貴女に一緒に行っていたゞきたいと思うのだがね。」勝平は、熱心に、退引ならないように瑠璃子に云った。