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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
紅葉の考え方や、観方はいかにも常識的かも知れません。が、然し作品全体の味とかその表現などにこそ、却って芸術的な価値があるのじゃありませんか。あの作品の規模の大きさから云っても、画面的に描き出す手腕から云っても、明治時代無二の作家と云ってもよいと思うのです。いや、あの鼈甲牡丹のように、絢爛華麗な文章丈を取っても、優に明治文学の代表者として、推す価値が十分だと思うのです。」
信一郎は、可なり熱狂して喋った。法科に籍を置いていたが、高等学校に入学の当時には、父の反対さえなければ、欣んで文科をやった筈の信一郎は、文学に就ては自分自身の見識を持っていた。
信一郎の意外な雄弁に、半可な文学通に過ぎない小山男爵は、もうとっくに圧倒されたと見え、その白い頬を、心持赤くしながら、不快そうに黙ってしまった。
三宅は、云い込められた口惜しさを、何うかして晴そうと、駁論の筋道を考えているらしく口の辺りをモグ/\させていた。
「渥美さんは、本当に立派な文芸批評家でいらっしゃる。妾全く感心してしまいましたわ。」
瑠璃子夫人は、心から感心したように、賞讃の微笑を信一郎に注いだ。