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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
其処にいた多くの人々も、銘々に口を出した。
「『たけくらべ』! ありゃ明治文学第一の傑作ですね。」
「ありゃ、僕も昔読んだことがある。ありゃ確にいゝ。」
「あゝそう/\、吉原の附近が、光景になっている小説ですか、それなら私も読んだことがある。坊さんの息子か何かがいたじゃありませんか。」
「女主人公が、それを潜に恋している。が、勝気なので、口には云い出せない。その中に、一寸した意地から不和になってしまう。」
「信如とか何とか云う坊さんの子が、下駄の緒を切らして困っていると、美登利が、紅入友禅か何かの布片を出してやるのを、信如が妙な意地と遠慮とで使わない。あの光景なんか今でもハッキリと思い出せる。」
代議士の富田氏までが、そんなことを云い出した。こうした一座の迎合を、秋山氏は冷然と、聴き流しながら、最後の断案を下すように云った。
「兎に角、明治の作家の中で、本当に人間の心を描いた作家は、一葉の外にはありませんからね。硯友社の作家が、文章などに浮身を窶して、本当に人間が描けなかった中で、一葉丈は嶄然として独自の位置を占めていますからね。一代の驕児高山樗牛が、一葉丈には頭を下げたのも無理はありませんよ。