轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

「美奈さんは、今日は何うかしているじゃないの?」と、母から心の裡の動揺を、見透されると、美奈子の心は、愈々掻き擾されて、到頭中途で合奏を止めてしまった。

午後になるのを待ち兼ねたように、美奈子はお墓詣りに行くための許しを、母に乞うた。何時もはあんなに気軽に、口に出せることが、今日は何だか、云いにくかった。

墓地は、何時ものように静かだった。時候がもうスッカリ夏になった為か、此の前来たときのように、お墓詣りの人達は多くはなかった。が、周囲は、静寂であるのにも拘わらず、墓地に一歩踏み入れると同時に、美奈子の心は、ときめいた。何だか、そわ/\として、足が地に付かなかった。恐いような怖ろしいような、それでいて浮き立つような唆られるような心地がした。

父母のお墓の前に、じっと蹲まったけれども、心持はいつものように、しんみりとはしなかった。こんな心持で、お墓に向ってはならないと、心で咎めながらも、妙に心が落着かなかった。

彼女は、平素とは違って、何かに周章たように、父母の墓前から立ち上った。

「すみや、今日も霞町の方へ出て見ない!」

美奈子は、一寸顔を赤めながら何気ないように女中に云った。