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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
美奈子は、小さい胸の中でそう決心した。
丁度、そう考えていたときに、
「美奈子さん! 一寸いらっしゃい!」
と、母から何気なく呼ばれた。美奈子は淋しい心を、じっと抑えながら、元の座席へ帰って行った。顔丈には、強いて微笑を浮べながら。
「貴女! 青木さんと、青山墓地で、会ったことがあるでしょう!」
母は、美奈子が坐るのを待ってそう言った。青年の顔を、チラリと見ると、彼もニコ/\笑っていた。美奈子は、何か秘密にしていたことを母に見付けられたかのように、顔を真赤にした。
「貴女は覚えていないの?」
母は、美奈子をもっとドギマギさせるように言った。
「いゝえ! 覚えていますの。」
美奈子は周章てそう言った。
美奈子は、青年が自分を覚えていて呉れたことが、何よりも嬉しかった。
「青木さんの妹さんが、よく貴女を知っていらっしゃるのですって。ねえ! 青木さん。」
夫人は賛成を求めるように、青木の方を振り顧った。
「そうです。たしか美奈子さんより二三年下なのですが、お顔なんかよく知っているのです。此間も『あれが荘田さんのお嬢さんだ』と言うものですから一寸驚いたのです。僕の妹を御存じありませんか。