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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

二

「なに、俺があのお嬢さんと結婚する必要は、少しもないのだ。金の力で、あのお嬢さんを、左右してやればそれでいゝのだよ。金の力が、どんなに大きいかを、あのお嬢さんと、あゝそう/\、もう一人の人間とに、思い知らしてやればいいのだよ。」

荘田は、何物も恐れないように、傲然と云い放った。

丁度、その時だった。荘田の背後の扉が、ドン/\と、激しく打ち叩かれた。

「電報! 電報!」と、誰かゞ大声で叫んだ。

二

「電報! 電報!」

扉は、続け様に割れるように叩かれた。今迄、傲然と反り返っていた荘田は、急に悄気切ってしまった。彼はテレ隠しに、苦笑しながら、

「おい! 勝彦! おい! よさないか、お客様がいるのだぞ。おい! 勝彦!」

客を憚って、高い声も立てず、低い声で制しようとしたが、相手は聴かなかった。

「電報! 電報!」強い力で、扉は再び続けざまに、乱打された。

「まあ! お兄様! 何を遊ばすのです。さあ! 彼方へ行らっしゃい。」優しく制している女の声が聞えた。

「電報だい! 電報だい! 本当に電報だよ。美奈さん。」男は抗議するように云った。

「あら! 電報じゃありません、お客様の御名刺じゃありませんか、それなら早くお取次ぎ遊ばすのですよ。