轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
七
夫人の皮肉な態度は突き刺すようなトゲ/\しさを帯び初めた。
七
夫人の皮肉なトゲに、突き刺されながらも、信一郎は、やっと自分自身を支えることが出来た。
「用事と云って、外ではありませんが、いつか貴女にお預けして置いたあの白金の時計を、返していたゞきたいと思うのです。死んだ青木君から遺託を受けたあの時計をです。」
信一郎は、一生懸命だった。彼は、身体が激昂のために、わなゝこうとするのをやっと、抑えながら喋べった。が、その声は変に咽喉にからんでしまった。
夫人の冷たさは、愈々加わった。その美しい面は、象牙で彫んだ仮面か何かのように、冷たく光っていた。『何を!』と云ったような利かぬ気の表情が、その小さい真赤な唇のあたりに動いていた。
「あら、あれは妾にお預けして下さったのじゃないのですか。一旦お預けして下さった以上、男らしくもないじゃありませんか。また返せなどと仰しゃるのは。」
信一郎を揶揄っているように、冷かしているように、夫人の語気は、ます/\辛辣になって行った。
「いや、お預けしたことは、お預けしました。が、それは返すべき相手が分らなかったからです。また、何う云う心持で返すのかが、分らなかったからです。