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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
」
瑠璃子夫人の巧みな逆襲に、みんなは声を揃えて哄笑した。富田と呼ばれた紳士は苦笑しながら言った。
「まあ、青木君の問題は、別として、僕も、近々箱根へ行こうと思っているのですが、彼方でお訪ねしても、介意いませんか。」
瑠璃子夫人は、微笑を含みながら、而も乱麻を断つように答えた。
「いゝえ! いけませんよ。此の夏は男禁制! 誰かの歌に、こんなのが、あるじゃありませんか。『大方の恋をば追わず此の夏は真白草花白きこそよけれ』妾も、そうなのよ、此の夏は、本当に対人間の生活から、少し離れていたいと思いますの。」
「ところが、奥さん。その真白草花と云うのが、案外にも青木弟だったりするのじゃありませんか。」
小山と呼ばれた外交官らしい紳士が、突込んだ。
「まあ! 執念深い! 発車するまでに、青木さんが、お見えになったら、その償として、皆さんを箱根へ御招待しますわ。御覧なさい、もう切符を切りかけたのに、青木さんはお見えにならないじゃありませんか。」
夫人はそう言いながら、美奈子達を促して改札口の方へ進んだ。若い紳士達は、蟻の甘きに従くように、夫人の後から、ゾロ/\と続いた。