Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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チベットりょこうき

チベット旅行記

河口 慧海

Lesen Sie チベット旅行記 (チベットりょこうき) von 河口 慧海 (かわぐちえかい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 531.520 Zeichen · 1042 Bildschirme

Aozora Bunko

泣き出した

と、少しく仰山に言いますと、娘が恋慕の情はにわかに恐怖の情と憂愁の情に変って、それでは自分の母が死んだのではないか知らんという考えを起したです。

ことにチベットではラマと言えば神通力を得て居る人が沢山あるということは俗人の迷信になっておるから、私に対してもやはりその妄信を繰り返してにわかにその情緒を変じた。そこで私はまずこれで安心だと思い、「なあにお前の阿母さんは死んだという訳でもあるまいけれども、この世の中は阿母さんが先に死ぬか、お前が先に死ぬか分らぬ。私だって明日死ぬか分らない。そういう危ない無常の世の中で、僅かの楽しみを無上の快楽のように思うて居るのは、実に馬鹿気た話であるから」と言って懇々説諭をしたです。すると「郷里の母が死んだか死なないかどうか本当に言ってくれろ」と言って

泣き出した です。それには少し困りましたけれども、まあよい加減にその場を過しますとその後も娘は母の事を思って全く私の事を忘れてしまった。大いに私は安心を得たです。そこで数日滞在の後、八月二十六日に一緒にそこを出立して東北の方に向って行くと、その辺は一体に沼の原でそこここに浅い水が見えておる。