Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんらん

親鸞

吉川 英治

Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate

Aozora Bunko

ほう、ほう、と鹿の啼く声がする――。それに気づいて眸をこらして見ると、牝鹿や牡鹿が、月の夜を戯れつつさまよっているのだった。範宴の腰をかけた杉の根のまわりにも、一、二疋寝そべっていて、彼が手を伸べると、人馴れた眸を向けて、体をそばへ摺り寄せてくる。

「おう」範宴は鹿の背を撫でながら膝へ抱きよせた。若い牝鹿の毛なみはつやつやとして、肌は温かだった。

「鹿は、餌に飢えているらしいが。……はて、何もやる物がない」と、範宴はつぶやいて、

「飢えているといえば、わしにも何か飢えが感じられる。食ではない。眠りでも、安逸でもない。……この飢えた気持は、母の肌を恋うような血しおの淋しさだ。たまたま、山を下りて、俗界の灯を見、世間の享楽をのぞいたので、若い血が、うずきたがるのだろう」

彼は牝鹿の体温をおそれるように、膝から突き退けようとした。けれど、鹿は動こうともしなかった。

思春期の若い鹿たちは、牝鹿の声にあやつられて、追いつ追われつ夜を忘れているのだった。範宴は、立ちあがって、もいちど、猿沢の池の方へ戻ってみた。

ここにはまた、町の男女が、月見にあるいていた。恋をささやきながら肩を並べて行く男女は、しょんぼりと、さまよっている範宴のすがたを振向いて、気の毒そうな眼を投げた。