Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
四
四
「待てっ、待たんかっ」警吏は忌々しげに喚いて追いつづけてゆく。けれど四、五町も駈けると彼自身がそうしてまで捕えるほどの者かどうかを疑って舌打ちを鳴らした。
「盗賊ではないらしい、また、公卿の女部屋へ忍んだ女犯僧だろう、そんな者を捕まえていた日には限りがない」警吏は額の汗を、手につかみ忘れている法衣の片袖でこすった。そして汚い物でも投げうつように傍らの流れへ向って捨てようとしたが、すぐその崖の上から凄まじい滝水のように鳴って落ちる琵琶の音に気がついて、
「誰だっ、今ごろそんな所で」と仰向いて呶鳴った。
しかし、琵琶の主は答えようはずもない、その音を聞けばわかるように身も魂も四絃の中に打ちこんでいて、虚空の音が彼か、彼が虚空の音か、その差別をつけることは至難であるほどな存在であった。
「ははあ……例の峰阿弥法師がまた独り稽古をしているのだな、あいつも変り者だ、銭を与えても嫌だといえばどんな目にあわせても弾かないし、そうかと思うと、誰も聞いていない真夜中の山に入ってあの通り独りで弾いて独りで夜を明かしていたがる」何の罪科もあるまいに、警吏はその琵琶の音のあまりに楽しげなのが嫉ましくでもなったか、おおウい――と声をあげて再三呼ばわるのに、いっこう答えがないので、石を拾って松林の丘を見上げながら抛り投げた。