Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
九
「兄弟子、そろそろ参ろうじゃないか」
「行こうか。――急に安心したせいか、すっかり、落着きこんでしもうた。牛は、わしが曳こう」
「いや、わしのほうが、馴れているぞ」覚明は、もう先に歩いていた。つづいて夜露に濡れて汚れた軌が重たげに転りだす。
そして、およそ三、四町ばかり元の道へ引っ回して、並木の入口が彼方に見えたかと思うころ、覚明は、足をとめて、空の音でも聞くような顔をした。
九
「……耳のせいかな?」と、覚明がつぶやくと、
「なんじゃ」性善坊も立ちどまった。
するとこんどは明らかに、田か、野か、ひろい夜霞の中で笛のさけぶような女の声がながれて行った。
「あっ……」車廂へ、簾をあげて、範宴も遠くを見ていた。何ものかをその眼が見とどけたらしく、
「不愍な……」といった。そして、
「あれはまた、里の女が、悪い者にかどわかされてゆく泣き声ではないか。鎌倉殿の世となって、世は定まったようにうわべは見ゆるが、民治はすこしも行きわたらず、依然として、悪者は跳梁し、善民は虐げられている」
眉をひそめて嘆かわしげにいったが、とたんに、覚明は、手綱を、牛の背へ抛って、
「救うてとらせましょう」