Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
沙門の妻
一
摂津から大和路を巡ってくる――そういったまま飄然と旅に出た良人のことを。
もとより沙門の人に嫁したからには、町家の人や在家の武士や公卿の家庭のような夜ごとのまどいや朝夕のむつまじい日ばかりを彼女も予期してはいなかった。けれど――
「ここにおいで遊ばしたら……」と、燈火をともすにつけ、夕餉の膳に向うにつけ、女らしい哀愁は、当然にうごく。
月輪の実家方からついてきた、たった一人の侍女と、牛車の世話をする牛飼と、弟子の性善坊と覚明と――このせまい草庵にもおよそ七、八名の家族はいるのであったが、夜に入ると、それらの人はめいめいの部屋にこもってしまって、暗い松風の音が海鳴りを思わせるばかり淋しかった。
「しっ、盗っ人め!」勝手口の水屋の外でこう大きく召使の誰かが呶鳴った。
馴れぬうちは、そんな声にも、たましいを脅かされた玉日であったが、近ごろは、人里を離れたこの岡崎の住居にも馴れたので、また、裏の松ばやしに棲む狐の類が、納屋の穀物や、流し元の野菜屑を漁りにきたのであろうと思うだけで、かくべつ驚きもしなくなった。
嫁いで後、新たに建て増した持仏堂と二つのせまい部屋とに、宵の燈火を入れると、彼女はささやかな調度と机のある辺りに坐って、やはり良人のことを考えているのであった。