Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
三
裏日本の海が、松の森と山鼻のあいだに、染め出したように鮮明に見えてきたのは、どこかに、月が出ているからであろう。
「……有難い、やっと、風がやんだらしい」ほっとして、人々は、燈火を点けるのをわすれて、白い月明りに、夜の静寂を見まもっていた。
――と、奥の師の房の一室で、善信の声がひびいた。
「誰か、いますか」
「はい」
「よい月夜になったらしい。この垂薦を揚げて賜もらぬか」
「はっ……」生信房の枕元に坐っていた石念が立ち上がって、そこへすすんだ。
「これでよろしゅうございますか」
「おお……それでよい。……まことに今宵は、後の月ではないか。都の今ごろとは、大きな相違。……この冴えた月に、もう初雪がこぼれてくるとは」
「なにかにつけ、都におわした日ごろのことが、思い出されましょう」
「なんの――都の秋には都の趣があれば――越路の秋には越路の風物がある。――自然と共に生きんとすれば、人間はおる所に楽しめるものじゃ」
「ご書見でござりましたか」
「む……書を読んでいるうちのたのしさはかくべつ。没我、無我、身なく、古今なく、思わず長い夜も忘れる」
「お燈が持ちませぬので、さだめし、読書にも暗うて、ご難儀でござりましたでしょう」