Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
心蓮は、恐かった。
しかし――不愍さに捨てては逃げられなかった。
そこの一つの樹の根に、荒縄で縛りつけられている大きな黒犬は喉から断られてしまいそうに首を長く伸ばして、ほとんど、飛び出しそうな眼を、心蓮の影へ向けているのだ、訴えているのだ、何とも、言語のある人間には表情のできないような表情を必死に示して――
「どうしたのだ、百姓の子でも、咬み殺したのか、おまえは……」心蓮は、恐々、寄って行った、黒犬の体は、狂いに狂っていたためであろう、自分の血でよごれていた。
それを摺りつけて、犬は、心蓮にからみついてくる――。眼やにをもって、そして、血ばしった眼に、涙のようなものをもって。
「待て。――これっ、そうからんでは、解いてやることもできないではないか。離せ、お離し……」やっと、振りもいで、木の根の縄を解いてやったのである。すると犬は躍ってよろこんだ、狂喜というのはこういう態であろうと心蓮は眺めていた。
突然、黒犬は、征矢みたいに駈け出した。
「あっ……」と、呆れてながめている間に、もうその影は、灌木の下を突き切って、街道へ出たかと思うと、いっさんに、彼方の丘へ向って飛んでいた。