Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんらん

親鸞

吉川 英治

Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate

Aozora Bunko

だが、そうして、源家のわずかな血脈が、一身の安立ばかり願っていたら、源氏はどうなる。平家をいつまでも、ああさせておくのか。また、路傍の飢民をどうするかである。

彼はもちまえの東北武士らしい血をあらだたせて、さりげなく、預かって出た写経の塗筥を、手につかんで、唾をした。

「こんなもの! 遮那王様に渡しては、ご立志のさまたげだ」

築地の下の溝へ向って、砕けろとばかり、たたきつけた。

汚水にそれを叩きつけたが、とたんに彼はふと、吉光御前のやさしい姿を瞼に見た。光りある人間のあたたかな魂へ、土足をかけたような、惧れに襲われた。

椋の葉のしずくが、背にこぼれた。ぶるっと、何げなく、築地のうちの屋根の棟を振り向いた。しかし、さっきの光りものも見えない、何の異も見出せなかった。

だが、その時、彼の耳をつよく衝ったものがある。生れて間のない嬰児の声だ。十八公麿が泣くのだった。その声は、ただごとでない、地殻を割って、万象の芽が、春へのび出すような力のある、そして、朗かな、生命の誕生を、世に告げるような声だった。

「あっ……」吉次は何ということもなく、竦みあがった。両手で耳をおおって、暗い野を、後ろも見ずに駈けていた。