Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
雲母坂へかかっても、まだ夜は明けなかった。
憮然として、彼はそこに立っていた。見覚えのある樹、見覚えのある石、このあたりの草は、かつて玉日姫の涙でぬれたことがある、万野の膝の下に敷かれたことがある。
暁闇の空で、大きく鴉が啼く。――綽空はまた、無言で山へかかった、力のある足どりである、この山坂を九十九夜通いつづけていたころのあの迷いを追っている足ではない。
びっしょりと、満身が汗になる。白い息を吐きながら、彼は、根本中堂の前に立った。そのころ、やっと雲は紫いろの海と化して、ほのかに、今日の太陽を生みかけている。
「……まだお寝みか」綽空は一つの僧房の裏に立って閉ざされてある戸をながめた。そこは、座主の寝所である。
やがて、中堂の鐘が大きく鳴る。汗はすぐ氷になって、綽空の肌を噛むように凍えさせた。しかし、綽空は凝然として佇立していた。
何気なく、彼の眼の前の戸をあけた僧は、そこに立っている人影を見て、びっくりしたように尋ねた。
「あッ、どなたでござるか」
「綽空にござります。座主お眼ざめなれば、お取次ぎくださいまし」
「お、範宴どのか」僧は、思い出して、いよいよ、いぶかしい面持ちをしながら、あわてて奥へかくれた。