Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
時折、雨戸のふし穴へ眼をつけたり、じっと、耳を寄せたりしながら、彼らしい神経を研ぎすまして、視覚、聴覚、嗅覚、あらゆる官能を働かせていた。
――すると。一棟の戸のうちから嬰児の声がもれてきた。乳でも欲しがるように泣きぬくのであった。彼はハッと立ち竦んでいる。
「この棟だな、女のいるのは」と床下へしゃがみ込んだ。
誰か、その声で起きたらしい。しきりと、夜啼きする嬰児をあやしているようであったが、やがて、雨戸を開け、
「オオ、泣くな、泣くな……」縁の上から、嬰児に尿をさせ初めた。
霜の立っている土の上に、無心な嬰児の尿が湯みたいにそそがれた。四郎は狼狽して、
「あっ……」奥へ身を退いたが、その弾みに、床下の横木に頭をぶつけ、眼から火が出たような痛さを、顔をしかめて怺えていた。
五
「ひどい奴だ」頭の上の戸が閉まったので、彼は床下でほっとしながらつぶやいた。
「……坊主め」そんな些細な――偶然なことにも――彼の眼は遺恨をふくむのだった。
「――見ていやがれ、間もなく、この吉水の禅房も、ぺしゃんこにしてくれるから」
嬰児の泣き声がするようでは、この一棟の房にこそ、女人がいるに違いないと、彼は、根気よく、耳をすましていたが、時おり、床下へ洩れてくる人声や跫音は男のものであって、女のいるらしい気配はなかった。