Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
二
しかし、謎は謎のまま、幾日かつい過ぎた。そういう詮議だてさえしている遑のないほど現在の綽空は、吉水の法門がその日その日の心の梁であった、張りつめていた。
その日は、どういうこともなく、信徒たちの集まりもなく、師の法然上人も不在でありするので、まだ陽の明るいうちに、めずらしく岡崎の草庵へ綽空は帰ってきたのである。
すると、草庵に近い松林の小径で、ひとりの被衣の女に行き会った。ちらと、樹の間にそれを見たとたんに、綽空は、どきっと、妙なものに胸をつかれた。
すぐ、常に抱いている謎へ、
(あの女だ)と、いう囁きがのぼって、何か犯している罪に耳でも熱くなるような動悸が打ってくる。
そういう軽い狼狽を、綽空は、その女ばかりでなく往来でゆき会う女性にもよく覚えるのだった。その度ごとに彼は、自分の道念の未熟さを悲しむのであるが、二十年の難行道も、新しく享けている易行道の法の慈雨にも、これだけはどうにもならないものを感じるのである。そういう鍛えのある自分と、女にときめきを覚えさせられる刹那の自分とは、まったくべつな者のようにしか思えなかった。
(もし……)と、よほど、彼は声をかけてみようと思った。